担当教員 : 青木 香代子
「建築は、空間に表現される時代の意志である」
これは二十世紀の建築家ミース・ファン・デル・ローエが遺した言葉です。
当研究室では、建築は時代や社会の表象であるという前提に基づき、歴史的な事例について調査・研究をおこなっています。モニュメンタルな建築だけでなく、名もない建築の集合体としての都市も研究対象としています。
また、現在まで残されてきた建築だけでなく、既に失われてしまった建築や都市空間も興味深い研究対象です。史実の記録である公文書はもとより、年代記や絵画、現在の都市の中に見つけたかすかな痕跡、遺言書・日記・手紙などに記されている言葉の断片、そうした広範な史料の調査によって人々の日々の営みを想像し、それをまた別の史料により裏付けていく。このような調査を繰り返すことで、過去の建築や都市の姿を鮮やかに描き出すことができると考えています。
時空を超え、過去の建築や都市空間のありようを知ろうとする行為は、決して懐古的な興味によるものではありません。過去の建築がどのような ”時代の意志” つまり社会的・文化的な要請によって現れ、それが現在までどのように生き続け、あるいは失われたのか。それを紐解いていこうとする建築史・都市史研究は、必ずしも研究者を目指す学生だけでなく、デザイナーや建築家として活躍することを目標とする学生にとっても、これからの時代に必要とされるであろう歴史観を培ううえで、きっと役立つはずです。