2021年度 修士作品特別講評会

助手の安藤

2022年環境デザイン学科の修士作品の中で研究室から4名の作品が特別講評会へ選考されました。

講評会当日直前まで対面で実施を予定していましたが、コロナウイルスの影響もあり、残念ながら対面での講評会は中止となりました。

ですが、学生からの声もあり、今回はプレゼンテーションを各自がデータ、動画として用意し、客員教授である伊東豊雄先生、藤江和子先生、廣村正彰先生よりコメントをいただいていますのでここで紹介します。

コウ コト
日本における新しいサードプレイス、パブリックスペースにおける「私の場」について

この提案だけでは説得力に欠ける。提案の主旨を人々に理解してもらうためには、もっと詳細な図面を描いて説明する必要がある。

伊東豊雄

知覚の多くの割合を占めると言われる視線の環境における透明度をテーマに 町田市役所跡地における提案である。街中公園でのパブリックスペースにおける「個の場所」の在り方を模索している。リアルな人間行為―様々な仕草や行為をとおして―視る、見られる、人と人の物理的な関係の作り方を分析し模索している作品だ。ヒントは日常的に様々な場面での人間観察を通して知ることができるのだが、それだけではなく、気候風土や土地の人々の習慣などによっても異なるというところも興味深いものがあることを付け加えたい。

藤江和子

都市の中で外気を浴びて過ごせる個人の空間を作ることは、都市生活者にとって重要で、良い着目点だと思います。また、景観の透明度という自由度が高い要素と、他者の目線を遮る度合いを同時に分析した内容には興味が持てました。そして、安全性を保ちつつ地形を生かしてレイヤーをつくり、景観を確保した計画には誠意を感じ、大変評価できる内容だと思いました。今後もこのような計画は必要となってくる時代なので、より研究を進めてみてください。

廣村正彰

テイ ロンクン
採石における空間の構築ーーネガポジの手法

アイデアは面白いし、提案された空間も石のテクスチュアが魅力的。石を切り取った跡の空間はとても美しいので、もう少し最初のコンセプトのようにシンプルなままの方が強く良かったように思う。

伊東豊雄

設計手法としての ネガポジについて の模索をした上での 建築提案である。
石材採掘場でのネガポジは わかりやすい。だがこの作品に決定的に 失われているのは、 石という硬質で 様々なエネルギーの膨大な堆積の結果生まれたものであること、この石材の質量感、重さといったリアルな存在感そのものが 作品に感じられないことが残念です。石材だからこそ、人の手によって表出できる形というものもあるのですが。

藤江和子

計画的に面白いと思いました。ネガポジの関係で建物が建っていくことは、採掘や採石という引き算的要素から、構築という足し算的要素によって成り立つことだと理解できるので、合理的でよく考えられていると思いました。ただ、ここでは構築物の面白さを表現していますが、現実的に考えた時、この場所で必要な建物とは何かを再度見直してみるといいかもしれません。この場でしか得られない体験ができる構築物を、生活レベルに落としてこの場を何に使用するか考えるともっと面白い内容になると思います。

廣村正彰

ヨウ カイセイ
人の心理状態を表現するための空間道具のデザイン

心理学で用いられる箱庭療法に似た手法を用いて心理状態と空間の関係を見出そうとしたテーマはとても面白い。各個人のワークショップの内容がオンラインの情報ではよく分からないので何とも言えないが、研究を続ける価値はあるように感じる。

伊東豊雄

空間が人に与える心理的な影響は様々にあるのは当然ですが。
私たちには 肉体的にも心理的にも無限と言えるほどの広く深く知覚する力があると思うのです。この作品から 得られることは何だったのでしょうか。インスタレーションの会場 体験ができず残念であり、コメントが難しい。。
私は、内向きに深めるようで実は狭めていってしまうかもしれないアプローチに陥るより、もっと自由に開放的に深度を深めるアプローチを模索したいと改めて思いました。

藤江和子

人がデザインや創造をする時、その精神状態は制作者ごとに異なるので、それが作品に影響する場合は実際にあります。人の心理状態をこの空間道具を用いて視覚化するというヨウさんの提案は、新しい試みであり興味が湧きます。人々の心理状態と空間性が紐づいているように見えると、私も思いました。ただ、この研究を用いて、更にクリエイティビティをどう発揮していくのかという作業は必要になるので、その人の精神状態が分かった上で、どのように制作に向かえば良いのかまで、示唆してもらえるとより良い作品になると思います。

廣村正彰

野尻勇気
伊那谷の山裾に-山と住宅をつなぐ小さな集落の薪暮らし-

素晴らしいプロジェクトである。十分なサーベイの上に成立していること、地球環境への提案を含んでいること、シェアするライフスタイルへの提案など、テーマもデザインへのアプローチにも大いに共感した。実現可能性も十分にあり得ると思う。

伊東豊雄

過疎の山間地域に体験住宅やシェアハウスの可能性を模索した作品だが、作者自身が山間の薪暮らしを体験しての提案であることに まずは共感しました。
いかにも、現代的な共生の姿のように思えるが、提案された生活の姿は床暖房のオンドルのせいか、登り窯のように どれも同じ鉤型の細長い姿の建築であることに 違和感を覚えるのである。集まって共生して暮らすことは、生活スタイルが同じであることとは同一ではない事にも配慮してほしかった。  

藤江和子

実際にある暮らしを模範しつつ、自分なりの考えをプラスした良いプロジェクトだと思います。昨今、都市離れが進んで地方に暮らす人々が増える中、新しい生活様式を模索する1つの解決策になる提案だと思います。また、エネルギー問題にも関係しており、生活に必須である暖の問題や、間伐材の使用方法などを共同生活という形で解決し、一定の風景を作り出していくという計画は素晴らしいと思いました。オンドルを設置する計画など具体的な提案もあるので、全体的にリアリティのある良いプロジェクだと思いました。

廣村正彰

SHARE on twitter

助手の安藤

search